フランス国債の税制

1 - 有価証券現物取引に適用される税制

a) OATと他の国債

*税務上フランス居住者である個人に適用される税制

2018年度予算法(2017年12月30日の法律n° 2017-1837)は資本の利得・所得の課税方式を変更して所得税の対象とするとしました。租税法典第200 A条 1の適用により、2018年1月1日より資本の利得・所得は一律12.8%課税されます。これに加えて合計17.2%の社会保障税が課されます。しかし納税者は所得税の累進課税率適用を選択することもできます。選択は所得税申告時に行い、これは租税法典第200 A条 2の適用により、全資本所得・利得に係る撤回不能の選択となります。

動産所得については、税務上フランス居住者である個人が受取ったOATその他国債の利息は、例外は別として(以下を参照)、利払い時に12.8%の前納税(仮払い) が徴収され(これに加えて運用利益にかかる17.2%の社会保障税も徴収)、さらに翌年所得税申告に当たって累進課税の対象となります。前納税額は累進課税率で計算された課税額から差引かれ、前納税額の方が多ければ、租税法典第125 A条 V-1の適用により超過分は還付されます。
しかし以下の場合には前納税徴収が免除されます。

  •  フランスに所在する銀行からOATや国債の利払いを受ける税務上フランス居住者である個人で、前前年度の基準課税所得が25000ユーロ未満の単身者、あるいは合算で50000ユーロ未満の世帯に属する者で、利払いに先立つ年の11月30日までに前納税免除を申請した者。この申請は、前前年度の所得に対する課税通知に記された基準課税所得が25000ユーロないしは 50000ユーロ未満であることを名誉にかけて証する申請書を銀行に提出して行う。
  • フランス国外に所在する銀行からOATや国債等の利払いを受ける税務上フランス居住者である個人で、前前年度の基準課税所得が25000ユーロ未満の単身者、あるいは合算で50000ユーロ未満の世帯に属する者。

租税法典第157条3°の適用により、フランスで経済財務大臣の許可を得て発行された市場性債券の償還プレミアムは所得税を免除されます。ただし以下の場合は免除になりません。

  • 1985年6月1日以降発行された債券の償還プレミアムが額面の5%を超える場合。
  • 通貨金融法典L214-2条とそれに続く条項に言及される合同運用投信機関(SICAV又はFCP)が1989年1月1日以降配当したプレミアムで、配当額の10%以上に相当する場合。
  • 租税法典第238 septies A条 IIに規定される償還プレミアム。

従って上述の租税法典第157条に規定される免除は、以下には適用されません。

  • 1992年1月1日以降発行された国債
  • 1991年6月1日以来分離されたストリップス国債
  • 追加発行があっても市場では同一銘柄として上場されている国債で、追加発行の一部が1992年1月1日以降発行され、当該発行分が1994年1月1日以降支払いであったもの。

2018年1月1日以降個人がOATや国債を売って得た差益は、一律12.8%の課税、あるいは撤回不能の選択をした場合は所得税の累進課税率が適用されます(これに加えて合計17.2%の社会保障税が課される)。年度内に売却差損があった場合は同一年度内の同種の差益からのみ差引け、租税法典第150-0 D条1 ter 又は1 quarter、若しくは同法典第150-0 D ter条に言及された控除が適用される場合はその適用前のグロス金額で同一年度内に課税される金額のみが相殺されます。差引残がプラスである場合は、1/10を上限として前年度までの差損を差引き、次いで租税法典第150-0 D条11-1に言及された控除を適用します。逆に差引残がマイナスである場合は翌年度に繰越し、翌年度に上記の条件で1/10を上限として差益から差引きます。

* 法人税務申告をする個人会社・合名会社に適用される税制  

OATや国債の利息は個人会社・合名会社の課税対象利益に含まれません。租税法典第155条 II-1-1°の規定により、業務遂行により得た所得以外の所得は課税利益から除外されるからです。従って利息は税務申告では利益計算から除外し、以下のように申告します。

  • 個人経営者や合名会社の個人社員は前項の規定に従って個人の動産所得として申告する。
  • 法人税を納める法人社員の場合は、法人税に関する規定に従って税務申告する。

* 非営利目的の団体に適用される税制

営利活動があるかないかで、以下のように区別します。

  • 利得が非営利目的団体の非営利事業に関わる場合:1987年1月 1日 以降発行された国債の利息は 10%の法人税が課される。譲渡差益には法人税課税はない。
  • 利得が非営利目的団体の営利事業に関わる場合、あるいは業務全体について法人税申告をする非営利目的団体の場合:利得は法人税申告をする法人として以下に説明する規則に従って課税される

* 法人税納税者である法人に適用される税制

課税対象の利益形成に寄与する所得全て(有価証券の利息・償還プレミアム・譲渡差益)が法人税の対象となり、法人税普通税率33 1/3%、あるいは租税法典第219条I c の適用により、2018年1月1日から2019年12月31日までに開始した会計年度における12ヶ月間の利益のうち50万ユーロ未満の利益については28%の法人税率が適用され、さらに社会保障納付金3.3%が課税されます。2018年度予算法第84条に従い、2019年1月1日より 法人税普通税率は50万ユーロを超える利益に対して31%に、その後2020年1月1日より利益全額に対して 28%に、2021年1月1日より26.5%、2022年1月1日より25%にと順次引下げられます。

  • OATの利息は「経過利息(未収)」のルー ルで計算して課税される。
  • 償還プレミアム付き国債については、発行時の平均価格が償還価格の90%未満、あるいはプレミアムが証券/権利の取得価格の10%を超えるときは、複利方式で繰延計算するという課税規則がある。この場合、租税法典第238 septies E 条の規定により、有価証券やコントラクト取得時の残存期間にわたって複利方式で繰延べ計算をして償還プレミアムと毎年の受取利息が年度毎に課税される 。

* 機関投資家に適用される規則

  • 租税法典第38 bis A条に言及された銀行・金融会社・投資会社が固定利付債券を購入するあるいは応募し、運用証券あるいは投資証券として記帳し、かつ購入価格が償還価格と異なる時は、租税法典第38 bis条Bの規定に従う。取得価格と償還価格の差損益は、取得時に経過利子授受があったときにはその額を加算/差引いて、取得時の残存期間にわたって複利方式で繰延べる。
  • 保険会社や積立機関の場合は、租税法典第38 bis B bis 条の規定により、これら機関が指数連動債以外の債券を取得し、購入価格が償還価格と異なる時は、当該機関の課税所得計算に当たって、取得時から満期までの残存期間にわたって差損益を繰延べる。複数の償還期日があるときは最後の期日で計算する。繰り延べは複利計算して行う。

以上の規定が適用される場合、契約に毎年利払いがあるなら経過利子ルールで課税されます

b) 物価指数連動債(OATi)について

所得税を納める個人と法人税を納めるプロフェッショナルについては(上述のOATと国債の課税の項を参照)物価指数連動国債の課税は、他の固定利付きOAT、或いは変動利付きOAT(償還プレミアム付き国債を含む)の場合と類似していますが、いくつか固有の規定もあります。

租税法典第238 septies E条 II-3(第2項以下)の規定により、指数連動条項付きコントラクトの償還プレミアムは、各会計年度末に有価証券やコントラクト取得時以来の指数変動を考慮して満期償還額を評価して計算します。
銀行・金融会社・投資会社については、固定利付OATの場合と同様に、取得価格(取得時経過利子を含む)と償還価格の差損益は、 取得時の残存期間について複利計算をして繰延べます。

保険会社や積立機関の場合は、a)で言及した租税法典第38 bis B bis条の規定は指数連動債には適用されません。しかし償還プレミアム付きの債券については、上述の租税法典第238 septies E 条が適用され、同条 II-3(とそれに続く条項)の規定により、償還プレミアムは、各会計年度末に有価証券やコントラクト取得時以来の指数変動を考慮して満期償還額を評価して算定します。
毎年課税対象になるのは、その年のインフレで調整された元本価値で算定されるプレミアムの一部です。これは残存プレミアム課税額(課税対象償還プレミアム-前年度までの課税額)を債券の残存期間全体に振分けて償却するよう計算されます。

 

c) 非居住者に適用される規則

国債・政府証券その他フランス政府が発行し非居住者が取得できる市場性債務の利子等の所得は、租税法典第132 bis条(1986年12月31日までに発行された債券)と租税法典第119 bis条 1(1987年1月1日以降発行債)の規定に従い、フランスでの源泉徴収はありません。

2 –フランスが締結した二重課税防止協定

フランスが締結した二重課税防止協定を見る(仏語のみ)
( https://www.impots.gouv.fr/portail/les-conventions-internationales ).

 

1. OATと国債の利息・償還プレミアムには、運用商品課税として合計17.2%の社会保障税(一般社会保障納付税CSG、社会保障債務償還税CRDS、等々) が適用される。
2. 2013年度に受取った利得については、 この申請書を銀行に提出する期限は例外的に2013年3月31日であったが、申請書提出日以降に受取った利得について有効とされた。